ジクトルテープは「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎」の効能又は効果を有する本邦初の、経皮吸収型の全身性NSAIDs製剤です。
開発の経緯
腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎(以下、腰痛症等)の疼痛治療において、NSAIDs製剤は経口剤、坐剤、皮膚に使用する外用剤(以下、外用剤)の剤形ごとの特徴に応じて使い分けられますが、腰痛症等の効能を有する既存の外用剤は投与局所に作用するもののみであり、経口剤や坐剤のように全身循環血を介して効果を示す全身性の外用剤はありませんでした。ジクトル®テープは「各種がんにおける鎮痛」で既に適応を取得していますが、がん疼痛以外の疼痛疾患においても、全身性NSAIDs製剤の新たな投与経路として治療の選択肢を広げる製剤であると考え、腰痛症等の適応取得を目指し、開発されました。
投与方法
ジクトル®テープは1日1回貼付する、
全身性の経皮吸収型持続性疼痛治療剤です。
効能又は効果(抜粋)
腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎
用法及び用量(抜粋)
〈腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎〉
通常、成人に対し、1日1回、1枚(ジクロフェナクナトリウムとして75mg)又は2枚(ジクロフェナクナトリウムとして150mg)を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部又は大腿部に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替える。
用法及び用量に関連する注意(抜粋)
〈効能共通〉
本剤投与時は他の全身作用を期待する消炎鎮痛剤との併用は可能な限り避けることとし、やむを得ず併用する場合には、必要最小限の使用にとどめ、患者の状態に十分注意すること。
組成・性状
重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、出血性ショック又は穿孔を伴う消化管潰瘍、消化管の狭窄・閉塞、再生不良性貧血、溶血性貧血、無顆粒球症、血小板減少症、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、紅皮症(剥脱性皮膚炎)、急性腎障害(間質性腎炎、腎乳頭壊死等)、ネフローゼ症候群、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、重篤な肝機能障害、急性脳症、横紋筋融解症、脳血管障害が発現するおそれがある。
また、主な副作用として、5%以上の頻度で適用部位そう痒感、1~5%未満の頻度で適用部位紅斑、ALT上昇、AST上昇が報告されている。
詳細は、電子化された添付文書の副作用及び臨床成績の安全性の結果をご参照ください。
久光製薬社内資料. ジクトル®テープ承認時評価資料, 腰痛症患者を対象とした第Ⅲ相試験.
1)Yamaguchi S, et al.: Pain Ther 2023; 12(6): 1439-54.
著者のうち3名は久光製薬株式会社の社員である。
<投与部位別の治験薬使用枚数(安全性解析対象集団)>
<主解析(FAS)(検証的解析結果)>
投与2週後の3日間平均VAS値の変化量は、プラセボ群と比較してジクトル®テープ2枚投与群で有意な低下を示し、プラセボ群に対する優越性が検証された(最小二乗平均値の群間差-5.67mm;p=0.0025、共分散分析)。
さらに、ジクトル®テープ1枚投与群でもプラセボ群に対する優越性が検証された(最小二乗平均値の群間差-5.68mm;p=0.0024、共分散分析)。
<副次解析>
●1日ごとのVAS値の変化量(最小二乗平均値±標準誤差)は、ジクトル®テープ2枚投与群で2日目-8.67±0.97mm、14日目-19.44±1.65mm、ジクトル®テープ1枚投与群で2日目-7.91±0.97mm、14日目-18.76±1.67mm、プラセボ群で2日目-5.21±0.69mm、14日目-13.92±1.19mmであった。
●プラセボ群に対する変化量の最小二乗平均値の群間差(95%信頼区間)は、ジクトル®テープ2枚投与群で2日目-3.46mm(-5.79, -1.12)(p=0.0038)、14日目-5.51mm(-9.51, -1.51)(p=0.0070)、ジクトル®テープ1枚投与群で2日目-2.69mm(-5.02, -0.36)(p=0.0235)、14日目-4.84mm(-8.86, -0.82)(p=0.0184)であった。(いずれもMMRM)
<探索的解析>
Ca2+チャネルα2δリガンド併用例における投与2週後の3日間平均VAS値のベースラインからの変化量は、ジクトル®テープ1枚併用群-15.91mm、ジクトル®テープ2枚併用群-21.23mm、プラセボ群-6.14mmであった。
ジクトル®テープ2枚投与群:
副作用発現率は12.6%(17/135例)で、発現率が2%以上であった副作用は、適用部位そう痒感、血中クレアチンホスホキナーゼ増加が各2.2%(3/135例)であった。
重篤な副作用、投与中止に至った副作用及び副作用による死亡例は認められなかった。
ジクトル®テープ1枚投与群:
副作用発現率は14.0%(19/136例)で、発現率が2%以上であった副作用は、適用部位そう痒感、適用部位紅斑が各4.4%(6/136例)であった。
重篤な副作用、投与中止に至った副作用及び副作用による死亡例は認められなかった。
プラセボ群:
副作用発現率は19.1%(51/267例)で、発現率が2%以上であった副作用は、適用部位そう痒感12.4%(33/267例)、適用部位紅斑9.4%(25/267例)であった。
投与中止に至った副作用は、間質性肺疾患が1例であった。
重篤な副作用及び副作用による死亡例は認められなかった。
深瀬広幸 ほか:薬理と治療 2023; 51(3):341-50.
本研究は久光製薬株式会社の支援を受けて実施された。著者のうち3名は久光製薬株式会社の社員である。
日本人健康成人を対象とした臨床試験において、ジクトル®テープを2週間反復投与したときの胃・十二指腸潰瘍の発現割合は、ジクトル®テープ群で3.7%(1/27例)、ロキソプロフェンナトリウム錠群で16.7%(5/30例)であった。
副作用の発現割合は、ジクトル®テープ群で6.9%(2/29例)、ロキソプロフェンナトリウム錠群で16.7%(5/30例)であった。ジクトル®テープ群で発現した副作用は適用部位発疹、倦怠感が各3.4%(1/29例)であり、ロキソプロフェンナトリウム錠群で発現した副作用は下痢6.7%(2/30例)、上腹部痛、心窩部不快感が各3.3%(1/30例)であった。
重篤な副作用、投与中止に至った副作用及び副作用による死亡例は認められなかった。
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
2.1 消化性潰瘍のある患者[消化性潰瘍を悪化させるおそれがある。][9.1.1、9.1.11、11.1.2、11.1.3参照]
各薬剤に関する効能又は効果、用法及び用量、注意事項等情報等については、それぞれの電子化された添付文書をご確認ください。
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