生検を行う前には、検査の目的・必要性とともに、生じうる整容的・機能的な影響も含めて十分に説明を行います。また、生検をすれば必ず確定診断が得られる、と患者が予断を持っている可能性もあり、「診断を確定する」というよりは「診断精度を高める」といった説明のほうが誤解を生じにくいと考えられます3)。
皮膚生検の方法は、剃刀、剪刀、パンチ生検器具、メスによる楔状切開などで病変の一部を採取する方法(切開生検)、及び病変全体を切除する方法(切除生検)に大きく分けられます4)。
パンチ生検の切除範囲は通常2 mm-6 mm程度であり、適切な病理組織学的評価に必要な組織量や、整容上の許容範囲を考慮して径を選択します4)。
一方、楔状の切開生検や全切除生検といった、より大きな創が必要な場合は、術創の大きさなど、いっそう慎重な説明が必要と考えられます。また、切開デザインは創縁にdog earを生じず、縫合線が皮膚割線に沿うようにし、閉創時は真皮・表皮の縫合を正確に行うことが重要です1,3)。
全切除生検・部分生検のいずれを行うかについて、たとえば『メラノーマ診療ガイドライン2019』では、「生検の目的、病変の解剖学的部位と大きさ、メラノーマを疑う程度、患者側の要因(合併症、年齢、美容的希望など)によって症例ごとに決定する。全切除生検と部分生検のいずれも問題なく行うことができるのであれば、病変全体の評価が可能で偽陰性率の低い全切除生検を選択する」5)としています。なお、メラノーマの部分生検が全切除生検と比べてセンチネルリンパ節転移や生命予後などに悪影響を及ぼすとは考えられていません5,6)。
顔面・頸部など、生検部位が露光部に該当する場合は、色素沈着を予防するために遮光指導を行います3,7)。
前胸部・肩・上腕部などのケロイド好発部位8)や、引きつれ(瘢痕拘縮)が生じうる関節部9)で生検を行わなければならない場合、時間をかけて検査説明を行います。
また、皮膚張力がかかる部位では、肥厚性瘢痕を予防するため、テーピングなどによる固定が有用と考えられます10,11)。
生検部位のトラブルでは、時間経過で目立たなくなる傷跡であるのか、あるいは隆起部位の切除など修正手術を行う選択肢があるかを含め、丁寧に説明することが重要です3)。
肥厚性瘢痕や瘢痕拘縮に対しては、Z形成やW形成などの形成外科的介入が検討され、必要に応じて形成外科へのコンサルトも考慮します3,9)。
1) Beard CJ et al. Excisional Biopsy. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2022.
2) Sina B et al. J Cutan Pathol 2009; 36(5): 505-510.
3) 岩田洋平. 皮膚科トラブル対応テキスト, 出光俊郎 (編), 文光堂, 東京, 2019; pp. 116-117.
4) Ramsey ML, Rostami S. Skin Biopsy. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2022.
5) 日本皮膚科学会. 皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 メラノーマ診療ガイドライン2019. 日皮会誌 2019; 129(9): 1759-1843.
6) Martin RC 2nd et al. Am J Surg 2005; 190(6): 913-917.
7) American Academy of Dermatology. SKIN BIOPSY: DERMATOLOGIST-RECOMMENDED WOUND CARE. https://www.aad.org/public/diseases/a-z/skin-biopsy-wound-care (Accessed 2023-01-20)
8) 日本皮膚科学会. ケロイド. https://www.dermatol.or.jp/qa/qa26/index.html (Accessed 2023-01-20)
9) McMillan R et al. Interventions for treating burning mouth syndrome. Cochrane Database of Systematic Reviews 2016, Issue 11. Art. No.: CD002779.
10) Atkinson JA et al. Plast Reconstr Surg 2005; 116(6): 1648-1656; discussion 1657-1658.
11) Ogawa R. Plast Reconstr Surg 2022; 149(1): 79e-94e.
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