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解説

  • 産婦人科医が一般診療でよく出会う、患者さんの症状・主訴をベースに、婦人科疾患を考える上で必要な問診・理学所見・検査等を掲載しております。日々の診療の一助として是非ご活用ください。 産婦人科医が一般診療でよく出会う、患者さんの症状・主訴をベースに、婦人科疾患を考える上で必要な問診・理学所見・検査等を掲載しております。日々の診療の一助として是非ご活用ください。
  • (1)月経に関連する症状

  • (A)多い/長い

    問診:
    月経の最も多い時に生理用品が3時間持たない、夜中に寝具を汚したり生理用品を変えるために覚醒する、3cmを超えるような凝血塊が出てくることが多い、などが指標である。月経期間の定義は3〜8日なので9日を超える月経は長い。

    理学的所見:
    眼瞼結膜の色調、内診・腟直腸診による器質的疾患の検討を行う。

    検査:
    特に子宮や付属器の腫大を認めた場合は画像検査(まず経腟超音波)を行う。過多月経による貧血を疑う場合、全検血に加えフェリチンを測定して鉄欠乏状態を評価する。
  • (B)来ない/周期が長い

    問診:
    これまでに月経が来ていた女性が3カ月以上月経が来ない場合を続発性無月経、18歳になっても初経に至らない場合を原発無月経と定義する。続発無月経の最大の原因は妊娠であるので、了解を得て尿中HCG定性検査を行う方がよい。周期に関しては定義では25〜38日が正常範囲とされているので39日以上は周期が長い、ということになる。
    その月経が排卵を伴うものか、無排卵かは月経開始直前の水分貯留感(むくんだ感じや胸や臀部が張る、といった訴え)があったり、月経開始前14日ごろに左右いずれかの軽い下腹部痛がある、などの訴えがあると排卵があることを示唆している。

    理学的所見:
    日本人には少ないとされるが、男性化兆候(逆三角形にへそまで至る陰毛、濃い体毛、ニキビ、などには注意を払う。

    検査:
    続発無月経は、FSH(卵胞刺激ホルモン)正常または低値、エストラジオール(E2)正常または低値の中枢性と、FSH高値・E2低値の卵巣性に分かれ、ゲスターゲン(合成プロゲステロン)負荷試験で、消退出血が起こる第一度無月経、ゲスターゲンだけでは消退出血が起こらずエストロゲン+ゲスターゲンの負荷試験で消退出血が起こる第二度無月経、さらにこれでも出血が起こらない子宮性無月経に分類される。
    中枢性無月経ではプロラクチン高値による排卵抑制が起こっている高プロラクチン血症、LH(黄体化ホルモン)とアンドロゲン(テストステロンあるいはDHEA)の高値が見られる多嚢胞卵巣症候群(PCOS)による無排卵、視床下部性無排卵による無月経に分類される。PCOSにおけるLH高値、アンドロゲン高値は消退出血直後には見られないことがあるので、採血は定常状態(普段の無月経)で行う。
  • (C)頻回に来る

    問診:
    その頻度(24日以内の周期は頻発月経)、周期性(周期的かバラバラか)、量(いつも同じか、毎回違うか、多いか少ないかⅡ)-(1)-(A)参照、排卵の症状を伴うか否かⅡ)-(1)-(B)参照】、などを聞く。性成熟期以降の女性では悪性腫瘍による間歇的出血をこのように表現することがある。また、初経直後には性周期が一定しないことがあるので、年齢により対応を変える。

    理学的所見:
    性成熟期以降の女性では悪性腫瘍を念頭に置いた診察を行う。

    画像検査:
    経腟超音波が第一選択である。性交経験のない女性には経腹超音波(膀胱充満法)や経直腸法も考慮する。

    ★注意点
    内分泌学的評価では、排卵の有無(次回月経予定日2週間以内の血中プロゲステロン値)や、卵巣予備能の評価〔月経第5日以内のFSH、あるいは私費検査になるがAMH(抗ミュラー管ホルモン)〕は、挙児希望のある女性には重要。予備能が低い場合は生殖医療専門医に相談する。
  • (D)痛い

    問診:
    痛みの程度、服薬歴と服薬方法(我慢できなくなったらよくNSAIDsを内服する、薬理作用を考えてNSAIDsを痛くなる前から服用するだけで改善することがある、など)、痛みの推移(初経直後からか、年々悪くなっているか、など)、月経時以外の疼痛、行為(性交、排便、運動など)に伴う疼痛、いわゆる骨盤痛(下腹痛)か、それ以外の部位(外陰部、鼠蹊部、腹壁、手術瘢痕、など)か。

    理学的所見:
    月経中であれば子宮、付属器周囲の疼痛、あるいは疼痛を訴える場所の腫脹(希少部位子宮内膜症の存在)を観察する。腹壁由来か内臓由来かの鑑別にCarnetサインは有効なことがある。腟直腸診は子宮周囲の癒着や子宮内膜症などの病変の推定に有効である。初経直後から強い痛みを訴えることは稀であり、このような時は性器奇形も念頭に置く。

    画像検査:
    経腟超音波が基本で、器質的疾患(子宮筋腫・子宮腺筋症など)の描出には優れるが、チョコレート嚢胞以外の子宮内膜症病変は描出されないことが多い。MRIも同様である。

    ★注意点
    疼痛に関しては慎重な問診と理学的所見の取得が優先される。子宮内膜症の診断にはCA125は特異性が低く、診断に血中バイオマーカーを使用すべきではない(ESHRE guideline: endometriosis Hum Reprod2022)。問診、理学的所見から疑われるが、画像で映らず、経験的薬物療法が無効な場合、腹腔鏡検査による病理診断を試みる場合がある。
  • (E)気分変調(気持ちが沈む、イライラするなど)

    問診:
    月経のどの時期で気分変調が来るのかを聴取する。月経周期と共に日記の形で書いてもらうことが最も有効とされる。月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)、月経前気分不快障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)など、産婦人科領域で重要な病態においては3周期以上にわたり抑うつ、怒りの爆発、苛立ち、不安、混乱、社会からの引きこもり、などの精神症状が黄体期に始まり月経開始後4日以内に減弱・消失することが重要である。PMDDはより精神症状が強く多彩なものを言う。既往歴にパニック障害やうつ病、持続性抑うつ障害、パーソナリティー障害などでの受診歴がないかを確認する。

    理学的所見:
    症状は多彩なのでそれに対応した所見をとる。気分変調に対して前述の精神疾患の月経前増悪と区別がつきにくいことがある。一般的には月経の開始と共に症状が軽減・消失することが最も大きな鑑別のポイントである。

    ★注意点
    :臨床検査として、ホルモン値にPMSやPMDDに特徴的なものはない。基礎体温は症状と比較することができ、排卵の有無がわかる利点があるが、診断に必須ではない。PMSは過去3回の月経周期において、月経前5日間に身体的症状(乳房に関する症状)あるいは情緒的症状が少なくとも一つ以上存在すること、が必要である。
  • (F)乳房に関する症状(緊満感、痛みなど)

    問診:
    乳房痛、乳房緊満感が、腹部膨満感、頭痛、手足のむくみなどの症状と共に、または独立して黄体期に出現し、月経開始後4日以内に解消する、13日目まで再発しない、などの症状があれば、気分変調と併せてPMSを疑う。

    理学的所見:
    乳房痛、乳房緊満感が持続する場合には乳房の視診、触診を行う。視診では皮膚の発赤、形の左右差、皮膚のくぼみなどに注意し、触診では腫瘤の存在やその性状、左右差があるか、乳頭からの分泌物がないかなどを記載する。

    検査:
    乳がんの発見に関しては医師の視触診と自己による視触診でその発見率に差がないことが知られており、マンモグラフィーや乳房超音波といった検査が必要である。 
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